腕時計の電池交換って結構いろいろ考えてるんです。

「蓋開けて電池入れ替えるだけでしょ」

たっ たしかに、ざっーくり言うとそうなんですが・・・・・(笑)
近年ホームセンターさんなどでは電池交換をすることが少なくなってきています。これには理由があって「トラブルが多かった」からです。値段はお安く利用される方にとっては、気軽に利用できたようですが「傷をつけた」「内部のコイルを切ってしまった」「サイズの違う電池をいれた」など、業者さんからお持ち込みいただくことが多かったです。

メーカーさんの講習会で配布された資料がありましたので、ざっくりと電池交換についてご説明したいと思います。

1.修理(電池交換)依頼品をお預かりする前の注意


①あなたが電池交換の処置をとれるウォッチであるか?
②お客様から、そのウォッチをお預かりしてよいか?

お客様から伺った内容によって
・電池交換をするだけで良い場合
・使用上の操作ミスによるもので、故障ではない場合
・もう少し使用していただいて様子を見る場合
・お預かりして電池交換、またはウォッチの修理になる場合
・電池交換、またはウォッチの修理を受けられない場合
(以上資料より)

大前提がとても長いのですが(笑)最近はソーラー時計・電波時計・電波ソーラー時計などとても様々な時計が販売されています。それにメーカーのハッキリしている時計から、デザイン会社がOEMで製造した時計など、部品の入手が難しいものなど多種多様です。メーカーによっては部品の供給を完全にストップしたところもあるんです。(メーカーで修理させるため)
いまどきだな~と思うのは、スマートフォンと一緒にしていたために起こる「磁気による不具合」など、時計の「不具合」の原因が複数ある場合もみられます。

2.電池交換以前に確認すること

①交換理由
・ウォッチが止まったから
・ウォッチが不正確(表示が薄い、遅れる、ランプがつかない、表示が消えるなど)
・電池寿命予告が表示された(デジタルだとマーク、針式だと2秒運針など)
・そろそろ電池交換の時期だから
・付加機能が不調になったか(アラームやランプ等)

②電圧の確認
※電池を2個以上使用し、時計用と付加機能で別れている場合があるので注意が必要
・電圧が1V以下、またはゼロVに近い
・電圧は正常の場合(若干低めも含む)
酸化銀電池 1.55V  水銀電池 1.35V(今は作られていません)
リチウム電池 3V
*この場合は修理が必要な可能性が高い
・電圧が1.4V~1.45Vの場合(酸化銀電池)
ウォッチの種類によって”電池寿命予告機能”を示す電圧
2秒運針になることが多い

③電池が予定時期より早くなくなる場合
・付加機能(アラーム・ランプ等)を過度に使用した場合
・ウォッチの消費電流が多くなった(消費電流の測定が必要)
・電池の不良
古い電池だった/ショートさせた電池を使用した
規格の違った電池を使用した
(以上資料より)

「2秒運針」通常の動きから1つ飛ばしたような動きになるんですが、これにびっくりして持ってこられる方多いです。時計を買う時にそういう説明はなかなかしませんからね(笑)
現在タイムガーデンでは、43種類の電池を常備しています。ほぼほぼこれで困ることはありませんが、スイス製の時計で特殊なものがありそれは問屋さんから仕入れることもあります。スイス製と日本製の電池を使っていますが、使用推奨期間が書かれているものがあるので、電池の鮮度が見えて安心しています。

3.裏蓋の種類確認

ウォッチの裏蓋の固定方式は様々な種類があり、種類によっては開け方を間違えると本体や裏蓋を破損することがあるので注意する。
・電池専用裏蓋方式・・・・ネジ式(2点爪式)/ネジ式(コイン溝方式)/バヨネット式
・スクリュー式(防水時計はほぼこれです)
・バヨネット式
・内ダボ/内板バネ食いつき式
・外ダボ/内板バネ食いつき式
・スナップ式(外食いつき式)
・スナップ式(内食いつき式)
・スナップ式(つめ食いつき式)
・プラスチックパッキン直接式
・ネジ止め式
・ワンピース方式
(以上資料より)

最近の主流はスクリュー式とネジ止め式とスナップ式でしょうか。古いものですと、サイドにネジが付いているものや板バネを押して、裏蓋を引き上げるものなどもあります。懐中時計の古いものだとスナップ式かスクリュー式(蓋にネジがきってある、ただし工具のための溝はなし)のものがあるので、蓋がスクリューなのに無理やりこじ開けを使い傷になってしまうこともあります。
すごく廉価な時計だと、ニセスクリュー式もあります。スクリュー式は溝がきってあり、そこに工具をはめて回すのですが、ニセスクリュー式は溝があるのにスナップ式になっています。工具を差し込む場所がわかるようになっているものもあればまったくないものもあり、判別は難しいです。

4.電池交換

 電池交換のためには、ウォッチの裏蓋の”開け方”と”閉め方”の作業が伴います。ほとんどがこの技術の熟練にかかってもよい。

①電池交換の基本事項
 1.使用電池の種類、形式を確認し新しい電池を用意する
 2.裏蓋の固定方式を確認する
 3.必要な道具を準備する
 4.裏蓋を開けて使用中の電池を取り出す
  ・作業しやすいように、三つ折れバンドバンドを開きカンヌキを外してバンドを伸ばす
  ・ブラシで裏蓋周辺の汚れ、ごみを払い落とす
  ・作業中に問題になりそうな箇所、ガラスのひび割れ及びケースの”こじ開け口”がどこにあるかを確認する。
  ・裏蓋構造にあった道具を選び、開ける
  ・ウォッチの内部に埃が入らないように、裏蓋を下にしてあける
  ・電池の+と-方向を確認(入れる時に間違わないように)
  ・電池が電池押さえ板でネジ止めされている場合はネジを緩めて電池を取り出す(飛びやすい)
  ・取り出した電池の表面に異常が無いかチェック(液漏れがある場合がある)
 5.取り出した電池の電圧を測定
 6.キズミで内部をチェック
 7.電池の接続端子の掃除
 8.新しい電池を入れる
 9.パッキンの状態確認
 10.ウォッチが正常に作動するか確認する
   ※デジタルウォッチの一部は所定の個所をショートさせる”リセット操作”が必要
 11.裏蓋を取り付ける。
  ・位置が決まっているものは指定に合わせる
  ・ゴムパッキンにシリコングリスを塗布する
  ・裏蓋の閉め方は開けた時と反対の順序で行う 
  ・裏蓋が正しくしまったか、パッキンのはみだしは無いかを確認
   ※裏蓋の閉め工具を使わないと閉まらないものや裏蓋の変形を起こすことがあります
 12.最終チェック
  ・付属品の付け残しはないか確認
  ・外装が元通りになっているか
  ・ウォッチを正確な時間に合わせる
 (以上資料より)

少し簡略した部分もありますが、ほぼこの作業を行っています。タイムガーデンではすごく廉価な時計から、スイス製の高級時計なども電池交換をしていますので、それぞれに最適な開け方や閉め方、さらにデジタル時計ではリセット作業を行っています。
 防水の検査機械がありませんので、特に防水時計は”防水のテストをしていないので、使い方に注意していただくこと”をご説明させていただいています。防水時計は裏蓋やリューズのゴムパッキンによって防水性能を持たせていますので、劣化状況によっては防水性能が著しく落ちてしまうことがあります。この点も内部の状態を踏まえて、ご説明させていただきます
 店長加藤説明が長いことが(笑)たびたびありますが、上記のような状況を踏まえてのことなので、がまんして聞いていただければと思います。

 先日オークリーのバタフライという時計の電池交換をしました。六角ネジを外し、ネジキャップを外して、リューズを抜かないと蓋が開かないという”からくり箱”のような時計でした。悩んだんですが、それがまた楽しかったり(笑)

 お持ち込みいただく時計1つ1つが、メーカーも違いますし、使われてきた環境も違います、そして使われた年数や思い入れも違います。それぞれの時計と向き合って作業しています。ときにはお客様ではなく”時計”で覚えていることもあります。それではまた、皆様のご来店お待ちしております!